物流の効率化、コスト削減から物流戦略の策定まで、物流にかかわるあらゆる問題解決をお手伝いします。

山田経営コンサルティング事務所
03-3258-6661
事務所概要 アクセス 個人情報保護方針
ホーム 代表者ご挨拶 コンサルティング 研修・セミナー 実績 著書等 コラム
研修・セミナー案内
コラム
研修・セミナー案内
物流とロジスティクス入門コース
3PL提案営業基礎コース
物流とロジスティクス 作業効率化コース
物流データ分析入門コース
more
コンサルティングテーマ
3PL提案営業支援
物流効率化、コスト削減
物流センター内作業効率化
物流拠点配置計画支援
物流コスト・シミュレーション
物流戦略・方針策定支援
more

コラム 第1回〜第13回

コラム
・「第13回 人手不足でどうなる物流」2015年9月
・「第12回 人手不足でどうなる物流」2015年8月
・「第11回 人手不足でどうなる物流」2015年7月
・「第10回 人手不足でどうなる物流」2015年6月
・「第9回 人手不足でどうなる物流」2015年5月
・「第8回 人手不足でどうなる物流」2015年4月
・「第7回 人手不足でどうなる物流」2015年3月
・「第6回 人手不足でどうなる物流」2015年1月
・「第5回 人手不足でどうなる物流」2014年12月
・「第4回 人手不足でどうなる物流」2014年11月
・「第3回 人手不足でどうなる物流」2014年10月
・「第2回 人手不足でどうなる物流」2014年9月
・「第1回 人手不足でどうなる物流」2014年8月
コラムトップに戻る→
1.まずは対症療法も必要

前回、ドライバーを長期的、安定的に確保するには「社員を大切にする企業文化を醸成することが何よりも大切」「社員を大切にする企業文化を定着させていけば、ドライバーの待遇改善のために何をすればいいのか、経営者がいちいち指図しなくても具体策は自ずと生まれてくるはず」という話をしました。ただ、「それはわかっているけど、企業文化を作り上げるのは大変な時間がかかる。それまで会社がもたない」という声も聞こえてきそうです。
たしかにこれも真実です。きれいごとを言っていられるのは、直接経営にタッチしていない無責任な学者かコンサルタントぐらいなのかもしれません。一応コンサルタントのはしくれである筆者にとっても耳が痛い話です。風邪をひいて熱を出しうなっている患者に、「風邪をひくのは体の抵抗力が弱っているからだ。規則正しい生活と適切な食事、そして適度な運動をして体を鍛えなさい」と諭すようなものです。それはわかっているけど、まずは熱を下げ、咳を止めて会社に行かなければならない患者には、薬を処方して症状を改善する対症療法が必要な場合もあります。
人手不足への対症療法として比較的容易に思いつくのが「外国人労働者」でしょう。そこで、今回は外国人ドライバーの可能性について考えてみましょう。



2.外国人労働者はまだ少数

まずは、外国人労働者の就業状況を見てみましょう。
次のグラフは、厚生労働省が公表している「産業別の外国人労働者数と就業者数に占める割合」です。全産業のデータから、とりわけ人手不足が深刻といわれている「製造業」「卸売業、小売業」「宿泊業、飲食サービス業」「建設業」「生活関連サービス業、娯楽業」をピックアップしてみました。 グラフによれば、外国人労働者数、割合とも製造業が群を抜いて多いことがわかります。私たちが普段外国人労働者に接する機会が多い卸売業、小売業、宿泊業、飲食サービス業など、接客系がこれに続きます。外食産業などでは外国人店員が増えている印象がありますが、これが含まれる「宿泊業、飲食サービス業」の外国人労働者の割合は2.4%とそれほど多いとは言えないようです。
運輸業の割合は0.8%で卸小売業とほぼ同じです。ただ、運輸業ではおそらく倉庫など軽作業や事務系などが主で、ドライバーはごく少数と思われますので、この数字を鵜呑みにはできません。いずれにしろ、「人手不足企業」における外国人労働者の起用はまだごくわずかであることは確かです。




3.ハードル高い外国人ドライバー

では、現実に外国人トラックドライバーの可能性はどうなのでしょうか。結論から言えば、実現性はかなり厳しいといわざるを得ません。
最大のネックは就労ビザの問題です。企業が外国人を雇用する場合、仕事の内容が現在わが国で定められている就労ビザの種類の範囲内の活動であるかをまず確認する必要があります。
その種類は右の表にあるような高度な専門的職種に限られており、比較的単純労働であるトラックの運転は対象外のようです。永住者となるか、または日本人と結婚するかといった条件を満たさなければドライバーにはなれないのです。
仮にこの条件をクリアした場合、採用する企業側はどうでしょうか。運送会社の経営者の意見の大半は否定的です。その理由はおおむね次のように集約できます。
第一はコミュニケーションの問題です。日本語での読み書き、会話ができないと配送先での業務上の伝達や伝票のやり取りに支障をきたす、というものです。発着地が固定されている定期便のような輸送ならともかく、行き先が頻繁に変わる一般の配送業務では難しくなってしまいます。
第二の理由は各国の物流事情です。中国や東南アジアを訪れたことがある方なら、諸外国の運転マナーをよくおわかりなると思います。「あのマナーでトラックを運転されたら」と思うと、おそらく運送会社の経営者は心配で夜も眠れないでしょう。「一度滲みついたものを日本様式に再教育するのは難しい。安全に対する意識も非常に低い」とコメントする社長もいます。
「ではマンツーマンで教育すればよいではないか」と思われるかもしれません。ところが工場や建設現場、店舗などのように多くの先輩社員と一緒に働ける職場と違い、ドライバーはひとたび事業所を出発してしまえば単独となる仕事です。当初はともかく、日本の交通マナーを完全に習得するまで同乗指導するのは現実的に難しいでしょう。これが第三の理由です。実際、筆者がヒアリングしたある業界団体の幹部は、この運転マナーと安全教育の問題を外国人ドライバー採用が進まない最大の理由としてあげています。

このように、制度面や業務面、業界の受け入れ姿勢の面などで外国人ドライバーの起用にはかなり高いハードルがあります。今のところ、人手不足の即効性のある「対症療法」としては期待できそうにありません。
↑ページトップ
1.社員を大切にする企業文化を

「ドライバーの賃金などの待遇改善」に向けた取り組みというと、「では荷主に値上げをお願いして給料を上げればいい」と考えるかもしれません。たしかに直接的にはもっとも効果的な対策です。
でもちょっと待ってください。前回も触れたように賃金は絶対必要条件ではありますが、それだけでドライバーを定着させることはできません。ドライバーを一時的につなぎとめることはできても、長期的、安定的に確保することができるでしょうか。賃金だけに惹かれて入ってきた人は、より高い賃金を得られる職場があれば容易に転職してしまうかもしれません。
必要なのは社員を大切にしようという企業文化です。社員を大切にしない企業は、そもそも居心地がよくありませんし、会社に対する忠誠心も生まれません。
では企業文化を作るのは誰でしょうか。それは経営者です。厳密に言えば経営者の本音から醸成されます。とくに中小企業では、「企業文化=経営者の姿勢・考え方」といいかえても差し支えないでしょう。



2.社員はしっかり見ている

「社員を大切にする会社」などという理念を掲げながら、実際には経営者の姿勢や行動が伴わない、「言っていることとやっていることが違う」会社は山ほどあります。
社員には徹底した経費節減を求めながら、自分は運転手つきの車を乗り回し交際費使い放題のサラリーマン経営者、社員の迷惑を顧みずひたすら自己主張のための懇親会を開く経営者、公平な人事を公言しながらお気に入りのゴマすりばかりを引き上げる経営者、などなど筆者が実際に接してきた例は枚挙にいとまがありません。
社員は見ていないようでしっかり見抜いています。このような姿勢で「社員を大切に」などと理念を掲げても誰も信用しないし、白けるだけです。




3.細部に宿る社員軽視

社員を大切にしない会社は些細なところにその姿勢が現れます。たとえば作業員詰所と呼ばれるドライバーや作業員の控室です。中綿が露出したボロボロの長椅子、灰が飛び散るテーブル、汚れ放題の壁、鼻を衝く強烈なたばこ臭など、詰所というより「監獄」といった方がよいような詰所は珍しくありません。社員を大切にする会社がこのような環境を放っておいていいはずがありません。そもそも「詰所」といった呼称自体が不適切でしょう。
トイレも同様です。現場できれいなトイレに出会ったことの方が少ないというのが筆者の実感です。現場のトイレだから汚くてよいという理由は成り立ちません。これではトラガールはおろかトラック男子さえ寄り付かないでしょう。



4.稚拙でも社員の腹に落ちる経営理念を

経営者は明確な経営理念を持つべきです。経営理念というと、何か高尚なことを想像しがちですが、そんなことはありません。経営者が「こうありたい」と願う本音を示せばよいのです。しゃれたコピーやキーワードなども必要ありません。平凡でも稚拙でも泥臭くても社員の腹に落ちるのがよい経営理念です。
外部のコンサルタントに依頼する例がよくみられますが、すべての寄り所となる経営理念は、表現はともかく経営者自身の生の言葉でなければ意味がありません。
ある企業では、社長が「経営理念を作ろう」と言い出したものの、その作業を役員に「丸投げ」してしまいました。役員たちは、経営理念の意味もよくわからないまま、それでもあれこれ社長の意向を「忖度」しつつ、よその会社の理念などを参考にしながらごくありふれた、薄っぺらな経営理念をひねりあげました。何年たっても社員はおろか役員さえも内容を覚えることができません。「理念カード」なしには朝礼の「唱和」もできない始末です。
「経営の現場では、理念などよりも経験にもとづいた的確な判断の方が大事だ」と思われるかもしれません。たしかにそれも真実です。現場では状況に応じた直観的で柔軟な判断が求められることも少なくありません。
ただ、拠り所となる軸、つまり理念なき判断は行き当たりばったりになりがちです。方針はブレまくり、社員は右往左往、経営者の顔色だけを伺いながら仕事をする「経営者の、経営者による、経営者のための会社」になってしまいます。
建前ではなく、「社員を大切にする」経営理念に裏付けされた企業文化を定着させていけば、ドライバーの待遇改善のために何をすればいいのか、具体策は自ずと生まれてくるはずです。



↑ページトップ
1.まずは業界での取り組みから

運送業界の人手不足を緩和する一つの方向性として、前回は「トラガール」を取り上げました。実効性はともかく(?)、話題性という点では大いに期待したい取り組みでした。
このように多面的なアプローチを検討するうえでは、まずは「物流・運送業界でできること」から始めるのが順当なところです。自ら努力することなしに、周りへの要求ばかり掲げても相手にしてもらえないのはどの世界も同じでしょう。



2.国土交通省のアクションプラン

折しもこの3月、物流政策アドバイザリー会議での有識者の議論を踏まえた「物流分野における労働力不足対策アクションプラン」が国土交通省から発表されました。このタイミングをとらえ、筆者なりの深掘りをしてみたいと思います。
アクションプランは、「新規就業の促進と定着率の向上」「物流の効率化・省力化」という二本柱から構成されています。このうち「物流の効率化・省力化」は、主に荷主として取り組むべき課題ですので、まずは「新規就業の促進と定着率の向上」の中から業界が直接コントロールできる対策を中心に考えてみましょう。




3.世間並みの待遇を

もっとも大切なことは、この業界に入ってくる人(とくにドライバー)を増やすこと、そして入ってきた人を辞めさせないことです。アクションプランでは、そのために「就業環境の改善」をいの一番に挙げています。筆者なりにもう少し噛み砕いて言えば、「運送業界もせめて世間並みに社員を待遇しよう」ということです。その理由はもうすでにこの連載で繰り返し述べてきたとおりです。
お題目としては至極当然です。「雨が降ったら傘をさせ」といっているのと同じで、誰が考えても答えは同じでしょう。話が少々飛躍しますが、物流問題の根っ子には在庫問題があります。そこで単純に「在庫を減らせばいい」と指摘する論調がありますが、これなどと同じ類といえるでしょう。



4.問題は具体策

問題は具体策です。世間並みの待遇をしようにも、どうやってどこから手を付けたらいいのかわからないからドライバー不足が起こっているのです。プランではそのための方策として、「ドライバーの賃金等の待遇の改善に向けた運賃・料金の適正収受等の促進」を挙げています。
この方策には、二つの重要なポイントが含まれています。一つはドライバーの賃金などの待遇改善です。賃金はもっとも重要な絶対必要条件といっても過言ではありません。何だかんだいっても、それなりの賃金をもらえれば人は集まります。例としては適切でないかもしれませんが、劣悪で危険な環境でも福島原発の廃炉作業がなんとか続けられているのは、作業者の賃金水準を抜きには語れないでしょう。
もう一つのポイントは運賃・料金の適正収受です。これも当然の対策でしょう。待遇改善の原資は運賃・料金です。その原資が適正に確保されないことには話が始まりません。

この点に関して言えば、すでに運賃はそれなりに上昇を始めています。昨年、日通、ヤマト、佐川などの大手が一斉に値上げを宣言したのはご承知の通りです。
また、実際にドライバーを抱える末端の下請け・傭車から元請業者への値上げ要求も厳しくなっています。荷主とこれら業者の間に立つ元請業者が板挟みになり、採算が悪化しているとも聞きます。


5.本当の課題は経営者の資質

ただ、ここで先に挙げた「自らできることから始める」という前提に立てば、本質的ではあるものの相手への要求が必要なこの問題にこれ以上踏み込むのは後回しにしたいと思います。運賃・料金が適正に収受できたとしても、その原資を適切に活用して就業環境の改善につなげる経営の仕組みがないことには意味がありません。いわば社内から原資を生み出す努力がまずは求められるわけです。
企業の力は経営者の器で決まるといわれます。つまり、課題の本質は経営者の資質にあるといっても過言ではありません。人手不足がここまで深刻になってしまった責任の一端は、物流会社の経営者にもあることを認識しなければなりません。その点で、物流に関心が集まり、注目を浴びている今こそ経営体質を変える絶好の機会と考えるべきです。そのためにはまずは経営者の意識から変えなければなりません。
ではどこから意識を変えていくか。次回からこの経営者の資質の問題に踏み込んでいくことにしましょう。
↑ページトップ
1.人手不足解消の切り札は

人手不足を緩和する(あえて解消とは表現しません)方策についてはさまざまなアプローチがあります。物流事業者として取り組むべき課題や荷主が解決するべき問題、さらには政府そして私たち消費者が考えなければならない問題もあります。
対策の中身についてもさまざまなレベルがあります。すぐ実行できる現実的な対応から、長期的かつ地道に取り組まなければならないこと、あるいは官民を巻き込んだ抜本的な改革まで検討する必要もあります。
残念ながら、「これをやれば絶対」といった切り札はありません。まずはすべての関係者があらゆる角度から多面的にアプローチしていく、という地味ですが着実なステップを重ねていくしかないのでしょう。
そこで今回は、当事者である物流業界でできることの中から、いま話題の「トラガール」について取り上げていきましょう。




2.トラガールの登場

トラガールとは、そのものずばり「女性トラックドライバー」のことです。
トラック運送業界は、他業種に比べて女性の進出が遅れていました。ある意味、女性とはもっとも縁遠い業界かもしれません。実際、トラックドライバーに占める女性比率はわずか2.4%(約2万人)にとどまっています。
一方で、大型免許を保有する女性は全国で13万4千人以上にのぼっており、ドライバーを職業の選択肢として考える女性は潜在的にはある程度見込めると思われます。
細やかな気配りや高いコミュニケーション能力、丁寧な運転など女性ドライバーならではの能力を発揮してもらえれば、業界も活性化することでしょう。
ただ、現役の女性ドライバーからは、女性であることを理由に就職を断られる、配送先などで女性用トイレが整備されていないといった声が上がっているのも事実です。女性ドライバーを増やそうとするなら、女性を雇うことについての経営者の意識改革や女性が働きやすい労働環境の整備、業界イメージの改善などの対策が必須です。
そこで、国土交通省が旗振り役となり立ち上げたのが、「トラガール促進プロジェクト」です。2014年を女性トラックドライバーの「人材確保・育成元年」と位置付け、活躍を促進していくため、同省のHPを設けで積極的な情報発信や経営者に対する働きかけなどを始めたのです。運送中のトイレ使用や荷役作業時の省力化など、女性ドライバーの労働環境の一層の改善に理解・配慮してくれる事業者などを、「トラガール協力企業」として紹介することも検討しているそうです。
サイトには、活躍する女性ドライバーの姿や安倍総理との記念写真なども掲載されており、華やかなイメージが溢れています。




3.トラガールのゆくえは

話題性という点では大いに期待できるトラガール・プロジェクトです。女性に優しい待遇や職場環境を目指せば、業界全体の底上げにもつながるでしょう。お店でも、男性を集めたければまず女性を集める、というのは集客の基本です。業界のイメージ向上や人手不足緩和のシンボルという面では興味深い取り組みといえるでしょう。
ただ残念ながら、実効性という点では厳しいと言わざるを得ません。実際のところ、男でも敬遠する職業に敢えて飛び込んでくる女性がどれほどいるでしょうか。一部の大手企業を除き、まともな休みもとれていない長時間労働の職場で、いきなり時短や育児休業といってもハードルが高すぎます(もちろんすでに実施している一部の例外企業はありますが)。まして、流通や介護など女性向きといわれる他の人手不足業界との厳しい競合を覚悟しなければなりません。
就職説明会などを告知する「リクルート等イベント情報コーナー」への掲載情報も寂しい限りです。うがった見方をすれば、男性が集まらないなら女性で、という短絡的な発想といえなくもありません。
関係者の熱心な取り組みに水を差すつもりはまったくありません。でもやはり、トラガールは「話題性の提供」や「業界イメージの刷新」の一手段と割り切って、まずは地に足を付けた男性ドライバーが働きたいと思うような職場、環境作りを着実に進めていくのが順当なところなのではないでしょうか。その結果として、女性にも魅力を感じてもらえるような職業となればしめたもの、といった程度にとらえた方が現実的です。次回からそうした地道な取り組みについてもう少し考えていくことにしましょう。

↑ページトップ
1.人の取り合いに

これまで長々と物流業界、なかでもトラックドライバーの実態を紹介してきました。憂鬱な話ばかりでしたが、現実であることは間違いありません。ただ、このままでは単なる「愚痴の羅列」といわれてしまいそうです。そこで、今回から「ではどうしたらいいのか」について、少し前向きに検討していきたいと思います。
ただ、これはそう単純な話ではありません。最大の理由は、深刻な人手不足に悩んでいるのは物流業界だけではないという現実です。喧伝されているように、建設業界、外食業界、流通業界、介護業界、さらには林業など、低賃金・長時間労働できつい「肉体系」「接客系」の深刻さは変わりません。こうした業界との厳しい人材の「取り合い」になることをまず覚悟しなければなりません。




2.年収1,000万円超えの職人も

いずれ劣らぬ強敵です。以前にも触れましたが、建設業界は建設費の高騰という価格調整機能が正常に働きますので、職人の待遇改善が進んでいます。日経新聞(2015年3月7日電子版)によると、14年の首都圏新築マンションの平均価格は4,364万円で、3年連続上昇しました。この10年でほぼ1,000万円上がり、リーマンショック前の価格を超えたそうです。
販売価格とともに、職人の賃金も上昇しています。コンクリートを流し込む型機の枠をくみ上げる型枠職人の中には、20代で年収1,000万円という「大台」超えも出てきているといいます。50代のある左官職人の昨年の年収は1,300万円です。
こうした高技能の人だけでなく、職人全体の所得も回復基調ですが、業界団体によればそれでも水準が産業界全体に比べ見劣りし、若い人を引き付けるところまでには至っていないそうです。




3.まだ恵まれている?介護業界

介護業界の人手不足も深刻と聞きます。介護職の平均賃金は産業界の約7割の水準です。でも、厚生労働省によれば、介護福祉士の従事者数は少なくとも2000年以降2012年までは順調に増え続けています(右グラフ参照)。もちろんこれには、介護という「マーケット」自体が急速に拡大していることで人手が追い付かないのでしょう。ただ、マスコミ報道などでは、大変な人手不足で明日にも介護を担う人がいなくなってしまうような印象を受けますが、決してそれほど絶望的な状況ではないことがわかります。
辞める人が多いとも聞きます。次のグラフをご覧ください。
2013年の離職率は21.7%と、産業界全体の16.3%に比べて高いとはいえ、それほど決定的な差があるとはいえません。2007年以降増加している傾向もありません。
年齢はどうでしょうか。同省の調査では、ホームヘルパーの平均年齢は2013年時点で44.7歳、福祉施設介護員は38.7歳で、高齢化するにはまだ時間の猶予がありそうです。むしろ若いという印象すら受けます。
このように、入職者数と年齢の点ではまだまだましな業界であるといったら言い過ぎでしょうか。
くわえて、介護業界には「介護保険」「介護報酬」という強力な公的資金源が控えています。いざとなれば政府の強力なバックアップが期待できるのです。さらに、最近の調査で介護施設の平均利益率は8.7%で、1施設平均で3億円あまりの内部留保があることが判明し、まだまだ賃上げの余地はあるとみられています。
このように、人手不足の典型例として話題に上る他の業界は厳しいとはいえ、物流業界とは事情がだいぶ違うように思えます。若年層の入職がほとんどなく、しかも需給による価格調整機能が決して正常に働いているとはいえない物流業界にとって、非常にて手強いライバルたちとの戦いが待っていることは間違いありません。
気が付いたら、今回もまた少々暗い話になってしまいました。次からはもう少し明るい話題をお届けしていきたいと思います。

↑ページトップ
1.トラック・ドライバーの賃金は本当に安い?

先日、ある中小運送会社の社長と話をしていた時のことです。事情があって一流のメーカーから運送会社に転身したその社長は、データに基づいた経営分析と目標管理を社員に課して改善活動を進めるという、メーカー仕込みの経営管理手法を自ら率先して実行しています。データに弱い経営者が多い物流業界にあっては、画期的なマネジメントを行っている数少ない経営者といえます。
その努力の甲斐があって、それまで業績が低迷していた運送会社がわずかながら利益を出せるようになったそうです。感心している筆者に彼は「皆ががんばってくれてようやく業績も回復してきたので、初めてボーナスを出すことにした」と嬉しそうに話してくれました。額を聞くと5万円だそうです。
読者の皆様はこの話をどのような思いで受け止められるでしょうか。「赤字の運送会社のきわめて稀なケースだ」「ボーナスがたったの5万円?そんな会社あるの?」などなど、さまざまな感想があると思います。
この会社は特殊なケースでしょうか。実態を見てみましょう。
右のグラフは厚生労働省が発表している産業別の月間給与総額(時間外手当を含む)を多い順に並べたものです。全日本トラック協会の公表しているドライバー給与(右端の黄色い棒グラフ)と整合性をとるため、少々以前のデータとなっていることをご容赦ください。
グラフによれば、運輸業・郵便業は低い方の下から4番目に位置しています。前回の労働時間でも触れましたが、注意が必要なのは運輸業・郵便業には「元国家公務員」の日本郵政20万人が含まれていることです。そのために、大型運転手と普通運転手の給与を取り出して右端に表示しましたが、順位にそう変化はありません。
さらに注目しなくてはならないのは平均年齢です。折れ線グラフ(右目盛り)で表した業界別の平均年齢を見てみると、運輸業・郵便業の平均年齢は46.2才で、教育・学習支援業に次いで2番目に高くなっています。教育・学習支援業は給与総額で上位2番目ですから、平均年齢が高い分、給与総額も高くなっているものと推定されます。ある程度当然の結果といえます。 「給与総額が下位で平均年齢がほぼトップ」。この結果からいえるのは、実質的には運輸業・郵便業は全産業の中で給料が一番安いという実態です。




2.賞与は出ればまし

月間給与だけみていてもまだ実態はつかめません。問題は賞与です。「賞与が出ただけまし」の冒頭の会社は例外なのでしょうか。
下の表をご覧ください。これはトラック業界の労働組合の連合会である運輸労連が発表した2014年夏の一時金(組合は賞与のことをこう呼びます)妥結状況です。
一般企業並みの50万円以上の賞与を支給しているのは大手のみで、中堅以下は25万円を筆頭に軒並み低水準となっています。下位では10万円台や一桁の企業もあります。5万円を支給できて喜んでいた先の運送会社は決して例外ではない、ということがおわかりいただけると思います。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によれば、同時期の事業規模5人以上の民間企業の賞与一人当たり平均が約36万円ですから、給与のみならず賞与も相当程度下位に位置する業界であることが想像できます。
もっとも大手といえども、決して高い水準とはいえません。筆者がかつてこの業界に身を置いていたころ、年2回日経新聞に掲載される業界別の賞与額一覧を暗い気持ちで眺めていたことを、懐かしさと少しばかりの痛みとともに思い出します。


↑ページトップ
1.「家に帰れない」長距離トラック・ドライバーの実態

前回、トラック事業者の零細性の問題を指摘しました。この零細性が直接的に表れてくるのがドライバーの待遇です。待遇には、賃金や労働時間をはじめ休日や年休、福利厚生、教育研修などさまざまなものが含まれますが、もっとも切実なのは賃金と労働時間でしょう。今回はその二つのうち労働時間を取り上げてみましょう。
先日、ある中小運送会社の人事担当からこんな話を聞きました。その会社は関東を中心に地場配送(おおむね日帰りできる範囲の配送)を行っているのですが、昨今のドライバー不足にもかかわらずドライバーの採用にはそれほど苦労していないとのことです。長距離トラックから地場配送へ転職するドライバーが多いから、というのがその理由です。
話を聞いてみると、「長時間勤務の長距離トラック乗車では体がもたない」といいます。今日、大阪へ走ったらそこから次は鹿児島、その次は秋田、といったように次から次へ走らされ、1カ月くらい家に帰れないのもザラとのことです。長距離トラックのドライバーは1週間くらい家に帰れない、という話はよく耳にしますが、これほどの長時間とは驚きました。

これでは若者が敬遠するのも当たり前です。若者どころか、年齢、性別を問わず敬遠したくなるでしょう。




2.地場配送は待ち時間が多くて楽?

余談になりますが、長距離に比べれば地場配送のドライバーはずいぶんましのようです。それは「待ち時間」が多いためです。よく知られていることですが、量販店の運営する物流センター(一括物流センター)や卸の倉庫などでは、今や時間指定納品は当たり前です。それも「午前10時まで」や「午前中」がほとんどですから、当然のことながらその時間帯に納品トラックが集中します。せっかく指定時間に到着しても延々と荷卸しの順番を待つことになるわけです。待ち時間は何もすることがありませんから、ドライバーとしては楽です。したがって、地場配送のドライバーには人が集まりやすいのです。
荷受け作業を効率化することが目的で納品時間を指定した結果、トラックの運行効率が落ち、そのおかげでドライバーが集まる。何とも皮肉な話ですが、この問題はトラックの無駄遣いにつながる無意味な「商慣行」として別な機会で詳しく取り上げることにします。



3.全産業ワースト・ワン

下の表は厚生労働省が公表している「毎月勤労統計調査」から25年度の産業別実労働時間(所定外労働時間を含む)を抽出し、労働時間が多い順に並べ替えたものです。
大変不名誉なことに「運輸業・郵便業」は174.2時間で、同じ3K職種である建設業を抑え全作業中ワースト・ワンに輝いて(?)しまっています。
それだけではありません。この統計には注意が必要です。「運輸業・郵便業」には唯一の郵便事業者としての日本郵便株式会社が含まれています。最近まで国家公務員であった日本郵便と民間の運送会社では、その勤務実態がまるで異なることは想像に難くありません。事実、同社と日本通運が共同出資した宅配会社「JPエキスプレス(のちに清算)」に出向した日本通運の社員は、賃金、労働時間などあまりの格差に愕然としたといいます。




つまり勤務時間のはるかに短いと思われる、20万人を超える日本郵便の社員を加えた上でもこれだけの労働時間なのです。さらに、運輸業には運送会社だけでなく、海運や航空、鉄道、旅客輸送なども含まれます。トラックに比較したらまだ短いといわれるこれらの業種を除いて運送会社だけで集計したら・・・。ちょっと想像したくありませんね。
でもこれがトラック・ドライバーの現実なのです。こうした泥臭い実態から目をそむけていてはドライバー不足の問題は解決しません。私たちの暮らしを大きく変えつつあるコンビニもネット通販もオムニチャネルも、この問題を解決しない限り現実のものとはなりえません。
問題は労働時間だけに留まりません。次回はさらにやっかいなもう一つの待遇問題、「賃金」に踏み込むことにしましょう。

↑ページトップ
1.値上げ交渉ができない

先日ある荷主の集まりで、中堅特別積み合せ業者が「物流業界の現状と課題」というテーマで講演するのを聞かせていただきました。「現状と課題」といいながらも、実際は人手不足により運賃が厳しくなっている現状を訴える内容でした。ただ、その割には今一つ現場の逼迫感が伝わってきません。これを聞いた荷主さんはそれほど深刻に受け取らなかったのではないでしょうか。本当はもっと切実なはずなのに。
前回、人手不足が深刻な建築費の工賃が1.5倍くらいに上がっているのに、運賃はなかなか上がらない、という話をご紹介しました。それも、人件費ではなく「軽油価格の高騰」を理由とした交渉の結果であることを。
どうやらトラック事業者には、荷主とのストレートな運賃交渉をためらう傾向があるようです。
あるトラック事業者の経営者はこれを「心理的要因」と表現しました。彼は、バブル崩壊以降、ただひたすらに値下げ要請を受け、運賃のたたき合いを繰り広げてきたトラック事業者には、運賃値上げ交渉に対する強い抵抗感、心理的負い目のようなものが身についてしまっている、と説明してくれました。なかなか的を射た分析です。
バブル崩壊以降、運賃値上げなど口にしようものなら「他にトラック事業者はいくらでもあるよ」と言われてしまう時代が20年以上も続いてきたのですから、これもいたしかたないところなのかもしれません。その点、人件費などの内部要因ではなく、トラック事業者の管理責任が及ばない外部要因の「軽油価格の高騰」などは、堂々と主張できる格好の値上げ理由になるのでしょう。



2.急増したトラック事業者

それにしても、なぜ正当な理由での値上げ交渉さえままならないほどトラック事業者は弱い立場に置かれているのでしょうか。実際、同じ物流業者である海運会社や航空会社は対等とまではいかないまでも、荷主とそれなりに交渉する力は持ち得ています。少なくとも、ビジネスパートナーとしてのスタンスは保っているように見受けられます。その一方で、トラック事業者は明確な理由が見いだせないまま、今の荷主との関係が続いているとしか表現しようがありません。

ただ、一つだけはっきりしていることがあります。それは、この状況に拍車をかけたのは1990年の規制緩和であるということです。1990年、それまで許可制であったトラック事業が認可制となり、参入障壁が下がりました。それ以降の参入業者数はグラフを見ての通りです。
1990年には38,000社程度であった一般トラック事業者(特別積み合せ、特定、霊柩を除いたトラック事業者)は、2006年には57,000社を超えています。わずか16年でトラック事業者は5割も増えたのです。この急激な供給増が「やってくれるところはいくらでもある」状況を生み出したことは疑いの余地がありません。



3.問題は零細性

ここまで説明してきて、「ちょっと待て。トラック事業者数が増えているから運賃が上がらないというけど、最近、佐川急便やヤマト、日通は大幅な運賃値上げをしているじゃないか」と思われた読者もいらっしゃるでしょう。事実、佐川急便は昨年大幅な運賃値上げを行いました。その値上げを受け入れなかったアマゾンの宅配から撤退した「事件」はよく知られているところです。ヤマトも今年なって法人向け宅配運賃の引き上げを行っていますし、日通も貸切と路線トラック運賃タリフの値上げを発表しました。いずれも業界を代表する物流事業者が、本気で運賃値上げに取り組み始めました。筆者の知る限りでは、大手が一斉に値上げを発表したのは初めてです。
問題なのはトラック事業者の零細性です。次のグラフは同じく一般トラック事業者の従業員規模別の構成比を示しています。


中小企業庁は、サービス業の場合、従業員100人以下を中小企業と定義していますから、トラック事業者の8割強が中小企業ということになります。なかでも半分近くが10人以下の零細企業です。こうした零細なトラック事業者がヤマトや佐川と同様に、荷主や元請け事業者に運賃値上げ交渉ができるかというと甚だ疑問です。
すなわち、ここに人手不足の根底にある荷主とトラック事業者の関係、そしてトラック事業者の零細性の問題が浮かび上がってくるのです。




↑ページトップ
1.昨年末から今年

前回まで、バブル期の物流で何があったのか、筆者の拙い経験をご披露してきました。ここで時計の針を今に戻しましょう。
アベノミクス効果による昨年末の物量増大と、今年3月の消費税前の駆け込み需要による物流混乱。なかでも3月末の物流業界の人手不足は半端ではありませんでした。この時期、ヤマトや佐川急便、そしてアスクルなどが軒並み配達遅延を起こしたことは記憶に新しいところです。これらの事業者は、通常時期の数倍に荷物量が増える年末繁忙期を難なく乗り切ることができるキャパを持っています。それがオーバーフローしたのですから、想定をはるかに超える物量であったものと推定されます。
まだ配達能力が十分でなかったバブル真っ只中の一部宅配業者や、ペリカン便を吸収した直後のゆうパックなどを別とすれば、物量の増加によるこれほど大規模な混乱は記憶にありません。
車両不足・人手不足による配達遅延は全国規模でかつ、予想外に長期化しました。一部事業者では4月に入っても広範囲で遅れが発生していたと聞きます。
さて、このような「緊急事態」にあたって、筆者の勤務していた研究機関にも親会社の物流企業から「作業応援」の要請が出されました。物流会社を離れて17年になる筆者も久しぶりの現場作業に駆り出されることになったわけです。実際に提供できているかどうかは別として、本来、頭脳を提供することを本分(?)とする研究機関の社員にまで、肉体労働を求めざるを得なかったという事実からも、逼迫度がうかがえるものと思います。


2.それでも上がらない運賃

これほど逼迫した需給バランスにあっては、トラック運賃を筆頭とした物流料金は大幅な上昇となるはずです。事実、物流と並んで3K職場といわれ、人手不足が深刻な建設業界では、鉄筋を組む鉄筋工やコンクリートを流し込む合板を組み立てる型枠工の工賃が、見積もりベースで3年前の1.5倍になったそうです(2014年10月17日日経新聞夕刊)。そもそもこの業界では、建築費の高騰で工事予算をはるかにオーバーしたり、公共工事の入札が成立しなかったりといったことが日常茶飯事で起きています。
これは需要が供給をはるかに超えてしまった状況では至極当然のことといえます。工賃の上昇をもって、「建設業者が顧客の足元を見て、価格を不当に釣り上げた」などと受け取る人はいないでしょう。熟練した技能が求められ、人材育成にも時間がかかる建設業界の事情を考えればやむを得ないところです。
では、トラック運賃も大幅な上昇となったのでしょうか。全日本トラック協会が公表している「運賃水準判断指標」のグラフをご覧ください。これは貸切トラック業者の運賃に関する景況感の推移を表したものです。「増加・好転」と答えた数字から「減少・悪化」と答えた数字を差し引いたものを指標としたもので、マイナスであれば運賃が「減少している」と答えたトラック業者が、「上昇している」と答えた業者より多いことを意味します。
グラフによれば、それまでずっと減少していた運賃が、今年になってようやく増加に転じたことがわかります。昨年末以降、運賃が好転してきたことは間違いありません。
ただ、この上昇も14年の第3四半期には伸びが鈍ってきています。消費増税前の駆け込み需要による急激な物量増大が落ち着き、「喉元過ぎれば・・・」となっているようにもみえます。



もっとも不思議なのは値上げの上昇幅とその理由です。トラック業者に聞いてみると、値上げはせいぜい数%程度にすぎません。それも「人件費の上昇」ではなく、燃料である「軽油価格の高騰」を主な要因として荷主と交渉しているケースが圧倒的に多いのです。きわめて控えめな上げ幅、そして理由です。
トラックの原価に占める燃料費は10~20%程度、それに対してドライバーの人件費は40%以上です。本来、人件費の上昇を理由とした値上げであればもっと大きな上げ幅となるはずです。
どうやら、この業界には人件費のような内部要因を理由とした交渉ができず、燃料費上昇などの外部要因による値上げ交渉しかできない、あるいはしづらい事情があるようです。
この背景には、荷主と物流業者の関係、ストレートに言ってしまえば「隷属関係」の問題があります。この点こそ、物流業界の抱える根本的な問題です。少々誇張した表現を使えば、この問題に踏み込まずして人手不足問題の解決はない、といっても過言ではないかもしれません。
↑ページトップ

1.物流における2つの疑問

バブル期に発生した物流の混乱を通して感じた、いくつかの素朴な疑問があります。いずれも物流の世界では当たり前といえるかもしれませんが、一歩引いて世間常識から見てみると、ちょっとおかしいと思われるような「慣習」です。
でもその元をたどると、現在起きている人手不足の問題とは無縁ではないと思われますので、今回はその中から2つをご紹介します。

2.売り切れがない

無限に複写できるデジタル・コンテンツなどは別として、形のある商品には「売り切れ」があります。お店の商品が在庫以上に売れれば欠品となります。また、旅行などのようなあらかじめ在庫しておくことができないサービス商品は、宿泊施設や交通機関のキャパを超えればそこで売り切れとなります。ですから、顧客は品切れに備えて、早めに予約を入れるなど何らかの対応を考えるものです。つまり、顧客は基本的に売り切れを予測し、自衛策を講じるのです。
企業間の取引でも事情は同じです。商品でも原材料でも、「売り切れ」を回避するために計画的な調達、品ぞろえを行うことは常識です。メーカーの生産ラインでは、原価を低減するための平準化も意識されています。

ところが不思議なことに、物流には「売り切れ」がありません。正確に言えば、ないのではなく許されないのです。一般的には、出荷日の前日にオーダーが出され、翌日の出荷作業と配送車両の手配が行われます。最近では出荷当日オーダー、配送も珍しくありません。しかも商品、曜日によって出荷量は大きく変動します。事前に出荷予測を物流会社に伝えているケースも稀です。そもそも荷主自身も予測できないことが多いのです。
このような商慣行の中で、売り切れ、欠品は許されません。「出荷できない」「配達できない」ことは認められないのです。かといって、余分に調達しすぎて余ってしまった商品の返品もできません。当日になって、物流センターの従業員やトラックドライバーに「仕事がないので帰れ」というわけにはいかないのです。そんなことをしたら誰も来なくなってしまいます。
もちろん、物流会社側には契約に基づく「出荷責任」「配送責任」が存在します。受けたオーダーは最大限の努力をもって出荷し、配達しなければなりません。ただ、それも常識の範囲内での義務・責任であるはずです。基本的に「人」が商品である物流業において、直前の、しかも激しい波動に対して「売り切れ」の発生がなぜ許されないのか、これが第一の疑問です。

3.価格表がない

これも正確に言えば、ないのではなく、「あるのにほとんど機能していない」ものです。トラックには運賃タリフという、各社が地方運輸局に提出した届出料金があります。倉庫にも同じく料金表はあります。
トラック運賃について少し詳しくご説明しましょう。トラック運賃は、1990年まで運輸省(現・国土交通省)が一律に定める認可制が適用されていました。認可制とは、本来認可運賃で取引しなければ違法となる制度です。普段利用するバスやタクシー、電車なども同じく認可運賃です。私たちはその認可運賃にしたがって料金を負担しているわけです。
ところがトラック業界においては、実際は認可運賃とは名ばかりの、荷主と運送会社の交渉によって決まる「実勢運賃」が適用されていました。


89年の貨物自動車運送事業法施行により、それまで免許制により参入が規制されていたトラック運送事業が、一定の条件を満たせば新規参入が可能になる許可制に規制緩和されたのにあわせて、運賃も事前届出制へ変更となりました。さらに、03年には事後届出制へと移行しました。運送会社は独自の運賃料金表(タリフ)を設定できるようになったのです。
ただ独自のタリフとは言っても、ほとんどの運送会社は、1989年に認可された基準運賃をベースに設定しているのが実態です。しかも荷主と運送会社の力関係による実勢運賃が適用される商慣行は変わっていません。25年前の料金表を使っているうえに、満額収受できているケースはほとんどなく、その「○○割引き」といった適用が当たり前になっているのです。 同じ運輸業界の中で「人を運ぶ」のと「物を運ぶ」ので、なぜこれほど料金の考え方が違うのか、これが第二の疑問です。

4.根っこは力関係

この2つの疑問の足元には、荷主と物流会社の「伝統的な」力関係の問題が深く根を張っています。人手不足の問題も元をたどれば最後はこの問題に行き着きます。次回から、少々やっかいなこの関係について掘り下げていくことにしましょう。
↑ページトップ

1.長い梅雨と押し込み販売

バブル真っただ中のある夏のことです。その年、東北の梅雨は例年になく長引いていて、7月下旬になっても一向に明けるきざしがみえません。
筆者の担当するビール会社の7月の売上げは目標にはるかに届きません。蒸し暑い関東などの梅雨とは違って、東北の梅雨は半袖どころか上着が必要なくらい寒いからです。屋外のビアガーデンでビールという気にはとてもなれません。その一方で、かき入れ時である7月のビール販売目標(ノルマ?)はハンパではありません。
7月25日頃だったでしょうか。気象庁から突然、東北地方の梅雨明けが発表されました。待ちに待っていた夏の到来です。残り少ない日程の中で、ビール会社は7月の販売目標達成に向け、一斉に卸への販売攻勢を開始しました。
結果は・・・。最終日である7月31日にすべての出荷が集中しました。7月の売上目標未達分すべてが、です。いわゆる「押し込み販売」です。今より物流への関心も低かった(というより皆無?)当時、営業マンはオーダーさえ流せば商品は自動的に届くもの、と思っていたのかもしれません。

2.物流大混乱

発生したのは予想を超える混乱でした。あまり思い出したくない光景ですが、物流センターがパンクするとどうなるか、経験したことがない方にはあまりピンとこないかもしれません。
仙台の倉庫の出荷能力は1日当たり300トン程度、車両台数にして10トン車、4トン車合わせて30台くらいでしょうか。それに対し、7月31日の出荷オーダーは、1,200トン、車両130台です。
深刻なドライバー不足の中、まず通常の4倍以上の車両の手配ができません。それでも現場の必死の努力によって、どうにか100台近くの車が集まりました。
次の問題は、キャパをはるかに超えた倉庫の出荷です。悪いことに、当時の倉庫はいわゆる昔の米蔵。長期の保管には適しているものの、出荷口や積込みバースは小さいし、ひさしもごくわずかです。トラックの待機場所もありません。大量の製品を出荷する構造にはなっていなかったのです。
せっかく集めたトラックに出荷、積込みが追いつきません。1台のトラックが構内に入って出るまで実に8時間を要しました。倉庫の周辺道路には、積込み待ちのトラックがとぐろを巻いています。異様な光景と騒音に、近隣の住民から苦情が出て警察がやってきます。待ち時間の長さに怒って帰ってしまう運転手も現れます。

3.モノが届かない

当然、商品は卸に届きません。卸から荷主へ、荷主から物流会社の営業担当である筆者の元へクレームが殺到します。メールなどない時代、現場の電話は問い合わせが集中してつながりません。どの届け先のトラックが出発したのか、していないのかもわからない状態です。情報がつかめない荷主の怒りは頂点に達します。
さらに悪いことに、現場の作業員が徹夜で出荷作業を続けてしまいました。その結果、翌日は誰も出勤してきません。というか、出勤させられません。翌日も、通常の倍くらいのオーダーが入ってきますが、出荷できません。
結局この混乱を収拾するのに1週間を要しました。お盆の帰省から、ねぶたをはじめとする夏祭りと続く、東北のビール最盛期の出荷は機能停止状態になってしまったのです。ビール会社が受けた営業面でのダメージは、小さくありませんでした。


4.混乱ふたたび

20年以上も前の出来事を書いてきたのは、単なる思い出話のためではありません。物流の混乱とはどういうものなのか、その影響の大きさはどの程度なのか、危機感を共有したかったからです。単なる配送の遅れなどで済まされる問題ではなく、企業経営を左右するほどの事態に発展する危険性をはらんでいるのです。
ひと夏の東北の混乱にくらべ、昨今の人手不足は一過性のものとは思えません。このままいけば、あのような混乱が常時起こる可能性が高い、と危惧しています。官民あわせて、一時しのぎではない抜本的な対策を、真剣に考えなければならない事態に至っていることを認識する必要があります。
↑ページトップ

1.バブルで何があったか

物流業界の人手不足は、今に始まったことではありません。バブル景気の時代も相当深刻な人手不足に見舞われました。ただ、現役サラリーマンの方であの時代を知っている方はもう少なくなってきていることでしょう。
そこで、バブル期に物流で何があったのか、今と何が違うのか、何が参考になるのか、など振り返ってみることも無駄ではないかもしれません。

2.東北でのできごと

筆者は、1986年の夏から1991年の秋まで、物流会社の仙台支店に勤務していました。時はまさにバブル絶頂期です。
担当は、食品・飲料メーカーの営業窓口。仙台支店のメインの荷主さんです。いうまでもなく、仙台は東北6県(青森、秋田、岩手、宮城、山形、福島)最大の商業都市で、物流でも要です。担当各社の物流センターもほとんど仙台に立地していました。
地方勤務ゆえ、東京のバブル景気のすさまじさは耳にするだけでしたが、その余波は東北の地方都市にも及んでいました。ビルといってもせいぜい8階建てくらいが最高であった町に、高層ビルが次々と建設されていきました。物量の伸びも急激です。

3.スーパードライのインパクト

バブルが膨らみ始めた頃、飲料業界ではある「革命」が起きていました。1987年2月に発売されたアサヒ・スーパードライです。これが、後の「ドライ戦争」と呼ばれるビール開発競争の引き金となったことはよくご存じのことと思います。
担当者によれば、それまでの業界は「麻雀」をやっているようなものだったそうです。4人で卓を囲み、誰かがあがればその分誰かが沈む。パイの大きさが変わらない中で、ビール4社「キリン、サッポロ、アサヒ、サントリー」が限られたシェアを奪い合う、ゼロサムゲームのことです。業界の閉塞状態を的確に表現した比喩に感心したものです。
ところが、スーパードライの登場で状況は一変しました。それまで変化のなかった「パイ」自体が急激に拡大を始めたのです。実際、アサヒビールの社長、会長を務めた福地茂雄氏は、日経新聞「私の履歴書」の中で、発売当初からスーパードライの売上は計画の倍以上のペースで伸びていった、と述べています。

4.物量の爆発

それでなくてもバブルで膨れ上がった物量に加えて、このビール消費の急拡大。筆者の担当する食品物流は空前の活況に見舞われました。とくに、繁忙期である7月から8月にかけての出荷量の伸びは強烈で、毎日が欠車との戦いです。物流会社としてはありがたいことではあるのですが、何せトラックが足りません。オーダー100台に対して確保できるのは80台程度。
物流会社内でも車の取り合いが始まります。大きな声ではいえませんが、荷主にも優先順位を付けざるを得なくなります。売り上げ規模が小さい、あるいはおとなしい(あまりクレームをいわない)荷主を欠車させ、大口荷主や要求が厳しい荷主のオーダーを埋める、などといったことは日常茶飯事です。

5.貸切から路線へ

貸切トラックが確保できなかった貨物は路線便に向かいます。2トン、3トン、4トンといった、通常期ではあり得ないロットが路線便に流れてきます。夕方になると路線便のターミナルには、こうした「流れ貨物」の集中が始まります。ターミナルから溢れた貨物は、トラックバースにまではみだし、ターミナルは貨物の巨大な「壁」包囲されることになります。
こうなると、先に集荷してきた貨物はターミナルの奥になってもう取り出せません。第一、幹線便の幹線トラック自体も足りない。ターミナルは、「後入れ先出し」の倉庫と同じ状態となり、機能停止状態となってしまします。
路線の積み残しとともに、物流会社の営業には荷主のクレームが殺到します。だからといって、いったんパンクしてしまった物流はそう簡単には復旧しません。今でも、恐怖とともにあの貨物の壁が目に浮かびます。
こうした混乱が続いていた暑い夏の日、「事件」は起こりました。

↑ページトップ

今月から連載を始める山田経営コンサルティング事務所の山田です。よろしくお願いいたします。
本連載ではロジスティクスにかかわるベーシックな知識・手法の紹介から、最新の話題、さらには筆者の業界経験やエピソード、「いま思っていること」「言いたいこと」まで、とくにテーマを絞ることなく、物流・ロジスティクスにまつわることを気ままに取り上げていきたいと思います。
いわば、決められたコース料理ではなく、気分によってその都度注文していく一品料理、つまりロジスティクスの「ア・ラ・カルト版」と思っていただければ結構です。また、ご紹介するのは、緻密な取材やデータなどにもとづく公明正大な意見というよりは、多分に個人的な経験や考えにもとづく「偏った」見解であることもあらかじめお断りしておかなければなりません。
その点で、ご意見、ご批判、お叱りなど歓迎いたしますので、ご遠慮なくお寄せいただければ幸いです。

1.物流ビジネス大異変?

順番として、最初はロジスティクスのベーシックな知識などから始めようとも思いましたが、連載のスタートとしてそれではあまり面白くもないでしょうから、第1回目はいまもっとも注目されている人手不足の話題から取り上げることにします。
このテーマについては、すでに新聞、テレビ、雑誌などで盛んに報道されているため、物流業界のみならず一般消費者にも広く知られているところです。先日も、週刊ダイヤモンド(7/5号)に「佐川男子、クロネコ男子が悲鳴!物流ビジネス大異変」というタイトルで、いくぶんセンセーショナルに紹介されました。

衝撃的な見出しや興味を引くスクープ記事など、いくぶん誇張気味に受け取られる面もあるかもしれませんが、筆者の知る限りでは実態は楽観を許さない状況であることは確かです。右表の「トラック業界の人手過不足状況」にもその傾向がはっきりと表れています。

もっとも深刻なのは長距離トラックの運転手不足です。理由は明白です。下の表をご覧ください。1993年以降、長距離トラックの中心である大型トラック運転手の年齢構成が高齢化してきていることがわかります。これは30代、20代の若者が減っていることに起因しています。いまの大型トラックは50代以上の中高年のがんばりによって支えられている、といって間違いないでしょう。

一度勤務したら数日から1週間は家に帰れない長距離トラックの勤務形態を若者が敬遠しているのです。毎日家に帰って家族と過ごせる近距離トラックのドライバーに偏ってしまうのは無理もないことといえます。

トラックの受け皿として期待される鉄道輸送や船舶は、キャパの面で全く不十分です。また人手不足は、トラックだけではなく、物流センターの運営にも及んでいます。まさに、物流は「危機的状況」にあるといっても言い過ぎではありません。

2.バブル期に何があった?

筆者はいま、既視感にとらわれています。それは、筆者がバブル真っ最中の1986年から1991に勤務していた物流会社の仙台支店で目にした光景そのものだからです。決して楽しかったとはいえないけれど、貴重な体験であったあの頃の物流で何があったのか、次回から記憶をひも解いていくことにしましょう。
コラムトップに戻る→

代表者ご挨拶
ご挨拶
代表紹介
コンサルティング
3PL提案営業支援
物流効率化、コスト削減
物流センター内作業効率化
物流拠点配置計画支援
物流コスト・シミュレーション
物流戦略・方針策定支援
研修・セミナー
物流とロジスティクス入門コース
3PL提案営業基礎コース
3PL提案営業実践コース
作業効率化コース
物流データ分析入門コース
ロジスティクスの最新動向
災害支援物資のロジスティクス
実 績
コンサルティング実績
研修・セミナー実績
著書等
連 載
著 書
編 著
共 著
 
コラム
 
インフォメーション
事務所概要
アクセス
個人情報保護方針
お問合せ